「お子さん二人だと大変でしょう」飛行機が飛ばず3時間待った私たち。だが、このトラブルが思い出になったワケ
30分の遅れが、いつの間にか3時間に
家族そろって旅行に出る日のことでした。早朝の便だったため、眠そうな子どもたちを起こし、外がまだ暗いうちに家を出ました。
地方の空港に着き、飛行機に乗り込んで座席についたところで、機内に案内が流れました。
「設備の確認のため、30分ほど出発が遅れる見込みです」
少しくらいなら仕方がないと思っていました。ところが、なかなか出発する気配はありません。
しばらくすると一度飛行機を降りることになり、家族で搭乗口近くの長椅子へ移りました。
30分のはずだった待ち時間は一時間、二時間と延び、最初の案内から3時間ほどが経っていました。上の子は椅子にもたれて眠り、下の子もすっかり退屈した様子です。
やがて、この便は欠航になると案内されました。その代わり、別の空港から出る便へ振り替えられることになり、そこまでは航空会社が用意したバスで移動するとのことでした。
妻と手荷物をまとめ直していると、近くの長椅子に家族と座っていた男性が、こちらを向きました。
「うちも同じ便でした。バスで空港までご一緒しましょう」
そして、子どもたちを見ながら続けました。
「お子さん二人だと大変でしょう」
励ますというより、同じ状況なのだから一緒に行きましょう、という自然な言い方でした。私たちはその家族と一緒に、案内されたバス乗り場へ向かいました。
バスに乗ると、子どもたちの表情が変わった
バスが走り出してしばらくすると、相手の家族にも、うちの子どもたちと同じくらいの年の子がいることが分かりました。
最初はそれぞれ静かに座っていましたが、いつの間にか子ども同士で話し始めました。
相手の子がかばんから折り紙を出すと、鶴やカエルを一緒に折り始めます。それが終わると、今度は窓の外を見ながら山の数を数えていました。
妻が小さく笑って言いました。
「山、全部数えるんだって」
振り返ると、空港では退屈そうにしていた子どもたちが、楽しそうに窓の外を指さしていました。
さっきまで私も、崩れてしまった予定のことばかり考えていました。しかしバスに乗ってからは、不思議と待たされた3時間のことを口にしなくなっていました。
別の空港へ着くころには、子どもたちはすっかり打ち解けていました。
予定外だった時間が、旅行の思い出になった
結局、目的地に着いたのは午後もだいぶ回ってからでした。その日に行く予定だった場所には行けませんでした。
それでも、あとになって旅行の話をすると、子どもが真っ先に思い出すのは観光地ではなく、あの日のバスです。
「またあのバスに乗りたい」
今でも、ときどきそんなことを言います。
飛行機が予定どおりに出ていたら、あの家族と出会うことも、子どもたちが一緒に折り紙をすることもありませんでした。
そのときは困ったトラブルでしたが、今では予定になかったバスでの時間まで、家族旅行の思い出の一つになっています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














