「天井から水が落ちてきているんです」水漏れに気づいた私。だが、上の階の男性を責めなかった理由
排水ホースを戻し忘れた朝
以前、古い団地の四階で暮らしていたころのことです。
その部屋には洗濯機の排水ホースをつなぐ専用の口がなく、洗濯するときはホースの先を風呂場まで伸ばしておく必要がありました。
ある朝、私はその作業を忘れたまま洗濯機を回してしまいました。
気づいたときには、洗濯機のまわりに水が広がっていました。慌てて拭いていると、玄関の呼び鈴が鳴りました。
真下の部屋の方でした。
「天井から水が落ちてきているんです」
私は血の気が引きました。
「すみません。すぐに行きます」
タオルを抱えて下の階へ行き、濡れた床を一緒に拭きました。
強く責められることはありませんでした。それでも、迷惑をかけてしまったことが申し訳なく、その日のうちに対策を考えました。
風呂場の近くにフックを取り付け、排水ホースを使わないときも目につく場所に掛けておくようにしたのです。それからは、同じ失敗をしなくなりました。
今度は、自分の天井から水が落ちてきた
しばらく経った日曜の朝でした。
部屋で過ごしていると、天井の隅から小さく水が落ちてきました。見上げると、天井の一部がじわじわと濡れています。
すぐに、上の階からの水だと思いました。
以前の自分の失敗が頭に浮かびます。
タオルを持って上の階へ行き、呼び鈴を押しました。出てきたのは、少し前に越してきた男性でした。
「すみません。うちの天井から水が落ちていて…洗濯機のあたり、大丈夫ですか」
男性は驚いた顔をして部屋の奥へ戻り、すぐにまた出てきました。
「排水のホースが外れていました。すみません」
ひどく慌てている様子を見て、私は以前の自分を思い出しました。
「うちも同じことをやりました。床を拭くの、手伝います」
男性は一瞬驚いたあと、「ありがとうございます」と頭を下げました。
二人で床の水を拭きながら、私は自分がしている対策について話しました。
「私は忘れないように、風呂場の近くにフックを付けたんです」
「それ、いいですね。自分もやってみます」
水を拭き終えてから自分の部屋へ戻ると、天井から落ちてくる水も止まっていました。
以前かけてもらった言葉を思い出した
もちろん、水漏れは困ります。自分が被害を受ける側になって、改めてそう思いました。
それでも、あのとき上の階の男性を強く責める気持ちにはなれませんでした。
以前、自分が同じ失敗をしたとき、真下の部屋の方は怒鳴ることなく、何が起きているのかを知らせてくれました。
そのときの対応を覚えていたからこそ、今度は私も落ち着いて声をかけられたのだと思います。
失敗した経験そのものは、できれば繰り返したくありません。ただ、自分が困らせた側だったことを覚えていたからこそ、相手が慌てている気持ちも少し分かったのでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














