「あっ、やばい!すみません」読経中に位牌を倒してしまった親族。だが、住職が返した優しい言葉
読経の途中で、位牌が倒れた
祖父の法事で、親族そろって本堂に座っていたときのことです。
読経が続くなか、前のほうに座っていた親族が椅子から立ち上がろうとしました。長く同じ姿勢でいたため、少し座り直そうとしたようです。
そのとき足元がもつれ、祭壇のそばにあった台に体が軽く触れました。
こつん、と小さな音がして、置かれていた位牌が横に倒れました。
「あっ、やばい!すみません」
親族があわてて頭を下げます。読経もいったん止まり、本堂の中が急に静かになりました。
私も近くにいましたが、勝手に位牌へ触れていいのか分からず、動けませんでした。ほかの親族も同じだったようで、誰も手を伸ばしません。
住職は、慌てる様子もなかった
すると住職がゆっくり振り返りました。
倒れた位牌を見ても驚いた様子はなく、親族に向かって穏やかに言いました。
「大丈夫ですよ。こういうことはありますから」
そして自分で位牌を元の位置に戻しました。
「気にしなくて大丈夫です」
それだけ言うと、住職は再び正面を向き、止まっていた読経を続きから始めました。
木魚の音が戻ってくると、それまで張りつめていた空気も少しずつ元に戻っていきました。位牌を倒してしまった親族も、ようやく肩の力が抜けたように見えました。
私もそのときになって、知らないうちに息を詰めていたことに気づきました。
会食で、ようやく笑って話せた
法要のあとの会食では、先ほどの親族もすっかり落ち着いていました。
食事の途中で、少し照れたように言います。
「びっくりした。おじいちゃんに怒られたかと思ったよ」
すると伯父が笑いました。
「あの人は、そんなことで怒らんよ」
周りからも小さな笑い声が起こりました。
本堂では誰もどうしていいか分からず固まっていたのに、住職が大ごとにしなかったことで、その出来事は本当に小さなハプニングとして終わったのだと思います。
何か失敗したとき、周囲の反応ひとつで本人の気持ちはずいぶん変わります。
あの日の住職の落ち着いた声を、私は今でもよく覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














